感じる自由・創る自由:谷川俊太郎との言葉に学ぶ
- Emi
- 2024年11月6日
- 読了時間: 2分
更新日:2月20日
詩と音楽が出会う瞬間
昔、よく「詩と音楽」のコンサートを企画していた頃、谷川俊太郎さんがこう言っていた。
「自分の頭の中にあるうちは、その詩は自分だけのものだけど、原稿用紙にペンで書いた瞬間から、詩は自分だけのものじゃなくなる」
美術館のエントランスロビーで行われたピアノコンサートに足を運んだ。
このコンサートは「谷川俊太郎 絵本★百貨店」の関連イベントで、私の古い友人で、俊太郎さんの息子であるピアニスト谷川賢作さんによる楽しいコンサートが行われた。賢作さんが曲をつけた親子合作の歌を、軽快なトークをまじえながらピアノで弾き語る。
久しぶりに彼の音楽を生で聴き、心地よい時間を過ごすことができた。
谷川俊太郎の詩に込めた自由なメッセージ
大きなガラスの出入り口から、柔らかな自然光が差し込んでいた。
その光とピアノの音、音にのせた言葉が静かに、時にユーモラスに空間を満たし、穏やかなひとときを演出していた。そんな中、思いがけない話を耳にした。
「詩は自分だけのものじゃなくなる」という、あの時の俊太郎さんの言葉の続きを聞いたように感じたのだ。
俊太郎さんは、雑誌やテレビなどでインタビューを受けるたびに、
「この詩に込めたメッセージは何ですか?」などと、よく尋ねられるそうだ。
しかしその質問は俊太郎さんをちょっぴり不機嫌にさせる。
それは、詩に一つの決まった意味を押し付けることに対して少し抵抗を感じているかららしい。
「詩はそれを読んだ人のもの。感じ方はそれぞれで、解釈は自由だ」というような趣旨の話が、賢作さんのトークを通じて伝えられた。
だからこそ、「原稿用紙に書いた瞬間に詩は自分だけのものではなくなる」とおっしゃっていたのだなぁ、と改めて納得した。
詩が持つ新しい意味を知る
その言葉は、私にとっても深く響いた。詩や音楽、アートは、創り手だけでなく、受け手によって新たな意味を生む。
まるでこのピアノの旋律が、ただの音の連なりではなく、聴く人それぞれの心に異なる感情や物語を紡ぎ出すように。
10年以上前に聞いた話の続きを、今ここで聞けるとは思っていなかった。まるでタイムカプセル を開けたかのような気持ちだ。
差し込む光と音楽と共に、心に深く響く贈り物を受け取ったような、そんな特別な時間だった。

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